自ら山に入り、竹を切り出す事から始め、手作業で一つ一つ弓を作り上げる。
祖父の代から受け継いだ伝統の技を守り続け、ゼロから弓を作り上げる情熱を持つ弓師、桑幡和幸さんをご紹介します。
創業は1930年(昭和5年)
和幸さんの祖父は、当時、警察官を辞め、自宅隣で弓作りに従事していた従兄弟に弟子入りしました。
祖父は修行期間にその技を学び、やがて、そのままこの地に留まり、弓作りを本格的に始めました。
その後、父が祖父の技と精神を引き継ぎ、現在では和幸さんがその伝統を守り続けています。
和幸さんは幼い頃から家で弓が作られている環境で育ちました。
内向的な性格もあって、会社勤めよりも、家で仕事ができたらどんなに素晴らしいだろうと考えていました。
子供の頃は、画家や陶芸家など創作の仕事に憧れていましたが、家業である弓作りもそれに似た職種だったため、自然とこの仕事が自分の性格に合っていると感じるようになりました。
弓師を10年間続けても、「自分は一体何をしているのだろう?」という疑問が常にあり、20年が経ち、やっと形のある作品を作れるようになりました。
30年を迎えた頃に、ついに「私は弓師です」と胸を張ってお客様に伝える事ができるようになりました。
一般的に弓を作る工程は約200工程あると言われていますが、その中の1工程をマスターしても、弓を作れるようになるまでにはまだまだ先が長いと感じました。
1つの工程が完璧にできるまで進めなければならないため、全ての工程を親に頼らず自分で行えるようになるまで、約200工程全てを1人で作り上げることができないと、弓は作れないのです。
それは長いトンネルの中で出口が見えないような感覚でした。
父からは、「あまり考えるな!毎日気楽に弓を作っていれば、そのうち作れるようになるよ!」とアドバイスをもらってから、少し気が楽になりました。
和幸さんが全て一人で作り上げた弓で、日本一の座に輝いた選手がいらっしゃいます。
全日本弓道選手権で、自分の手で作った弓が見事に活躍していると聞き、とても嬉しく思っています。
特に、私の拘りは、自分自身が納得できる最高の弓を作り上げることです。
その弓が、お客様からも「良い弓だ」と認めていただけることが、私の目標であり、大きな喜びです。
また、過去には世界弓道選手権で優勝された射手の方をはじめ、国内外の弓道高段者の方々が、桑幡正清の弓でご活躍されています。これもまた、私の弓作りの励みとなっています。
今後もできる限り弓を作り続けたいと思っています。
祖父が80歳まで作り、父が76歳まで作ったので、その記録を越えたいと考えています。
桑幡和幸/Kuwahata Kazuyuki
桑幡正清大弓製作所 代表
「自分が納得できる弓を作り、お客様に喜ばれたい。そして、祖父や父の記録を超えるまで弓作りを続けたい。」そんな想いで、これからも作り続けていきたい!