具象彫刻とは塊が変化して息づき、やがて魂を宿していく姿に仕上げる事です。
時には木や石を彫り、また時には粘土で造形した形を石膏にし、ブロンズ像として鋳造する芸術活動を霧島市隼人町の森の中で続けている彫刻家の上床利秋さんをご紹介します。
生涯を貫く彫刻家としての人生を送ろうと決めたのは、鹿児島大学教育学部美術科学生時代に中村晋也教授に出会ってからだそうです。
やがて卒業して県内の中学、高校の美術教師をしながら制作活動を続けていました。39歳の時に第一幼児教育短期大学から「彫刻の研究をしてほしい」と誘われました。それから23年間、霧島市に自宅を建てて、学生たちに図工・美術を教授として指導してきました。
本来美術教師は展覧会を自分の学びの場として捉え、そこで育んだ感性をもとに、学校では子どもたちに噛み砕いて教育する姿勢を持っていてこそ信頼を得られるものです。
上床さんは教師時代から日本で最も権威のある日展に出品を続け、現在は会員です。
地元県内の美術展でも彫刻分野の重鎮的立場になり、美術教育者としても松陽高校美術科教論として重責を担っていましたが、生徒たちに芸術を語る時、自分自身がもっと深く美術を究めたいという思いは深まるばかりでした。
教授時代「杉アトリエ」と呼んでいた森の中の彫刻工房で彫刻研究を続けていましたが、世間の要望にもっと広く応えようと63歳の時に彫刻家として独立しました。
彫刻制作の中でも石膏像を型取りし、それをブロンズ像にする鋳造は危険を伴うとても難しい作業です。
それ故に、それだけを鋳物職人に委託する事も珍しくない工程です。
上床さんはそれさえも自身の創作活動の一環として杉アトリエで研究を重ね、ロストワックス脱蠟法という技術を独学で身につけました。
「自分の身体が自由に動かせるうちは常に新しい境地を拓きたい。あと10年は東京でも大型の作品に挑戦し、発表を続けてみたい。」と上床さんは語ります。
今年の夏は富山県の南砺市いなみ国際木彫刻キャンプ 2023に日本代表の一人として推薦されました。10日間泊まり込みで制作するそうです。
「そこで色々な人と知り合って今後は世界でも発表する事ができるようになれたらいいな。」と上床さんは語ってくれました。
上床利秋/Uwatoko Toshiaki
「木彫大会で色々な人と知り合って、今後は世界でも作品発表をしていきたい。」
今後も新しい試みの作品発表は続くようです。